私にも忘れられない感動

私の場合、今年の夏、初めて夫とニ人だけで海外旅行に出た。海外は初めてだが、圏内では、一、二泊ぐらいの旅は、二人でよく行っているし、観劇や食事にもまめに出かけている。だから、今回の旅のために、心の用意をしなければという気持ちはなかった。その上、私の夫は、日頃から自分の身の回りのことは自分でしているし、海外旅行にも慣れている。今回は、二人ともに初めてのイギリスヘ行った。二人とも体調もまあまあであったし、旅行を通して盗難事件にも会わず、不愉快な事件も起こらなかった。特に夫の長年の念顕だったシュトラトフォードという町へ行き、シェークスピア劇を背ながらの舞台装位でみることができて、夫はもちろん、私にも忘れられない感動を残した。三百年も経っているという、感じのよい宿を見つけ、しっとりとした伝統のある町を歩き回り、古いイギリスを堪能した。その後、ロγドンに伺ってからも、ミュージカルを観たり、何軒か予定していたレストラγで夜の食事を楽しんだり、イギリス七泊の二人の旅は何とか無事に、よき思い出の旅になる形で終わった。二人の聞に何もいやなことは起こらなかった。仲よく旅行して、二人で行けてよかったとこ人とも思っている。少なくとも私はそう思っている。しかし、朝から晩まで、脆から朝まで二人一緒である。三日目頃に私は気がついた。私は夫にいつもと少し違う気を遣っているのではないのかしら。「あなたおなか空いていない?」「そうだね。でも、朝、結構食べたからね」「そうね。じゃ、もう少ししたら、サγドイツチでも食べない?」「うん。でも、もう少しましなものがいいけど、おなかが空いているならいつでもいいよ」「そんなに空いているわけではないから後でいいわ」という具合いである。もともと夫は、食べることに関心のない人である。だから私が遠慮して話していると、何度か昼時間が過ぎてしまい、一日中、半分空腹のような中途半端な状態だった。その上、英国の小さい町のレ九トラγは、二時過ぎには一ベん閉めてしまう。日本式のそばやもないし、喫茶店もほとんどないと言ってよい。おなかが空いてくれば、どんな人でも機嫌ょくできない。私は悲しい気持ちになることもあったが、夫の性格をよく分かっているつもりだから、そんなとき、なるべく機嫌よくするように心掛けている自分に気がついた。ところが、様子を見ていると、夫の方も私に気を遣っている。ほんのちょっとしたこと、たとえば、どこかに行った帰り道、店のショ1ウィド1に、興味のあるものが見えると、何となく私の足が鈍くなる。